現代のビジネスマンとビジネスのやり方(要点)

日本において大手企業の一員になるには、子供のころから厳しい勉学に打ち込まねばなりません。それは小学校からだけでなく、最近は「適切な」幼稚園を選ぶことから始まります。そういった幼稚園に入るには入園試験を受からなければなりません。そして東京、京都といった一流大学の卒業者であることは必須です。このような大きなプレッシャーは、日本人が伝統的に持つ一般的な価値観や道徳感の崩壊を生む一つの原因となっています。このHPの他のページでも書いたように、子供たちは今、そういったシステムや社会に対して反発を覚えるようになりました。

終身雇用が当たり前の世の中が終わりを告げ始めたどころか、不況の嵐が吹きやまぬ日本では、大学卒業者の就職すら難しい時代となってきました。

晴れて大手企業の一員となった暁には、新しく築いた家庭も顧みず仕事に没頭せねばならぬ日々が待ち受けています。その代わり、高い給与、長期雇用(多分)、年功序列型賃金という恩恵を受けることになるでしょう。

どんな仕事にどこでどのくらいの間就くかは、会社の決めることです。大抵の会社では約3年ごとの異動が慣例化されています。社員の希望や、その社員の家族も一緒についていけるかどうかなどは全く配慮されず、遠く離れた土地への異動を命じられることも珍しくありません。社員にとって異動命令に従わないということは、会社からの信頼が永遠に傷つけられることを意味し、後々深刻な問題をもたらす結果となるでしょう。

勤務時間は、8:30頃から5,6時ごろまで。日本のサラリーマンには夜遅くまでよく働く働きバチのイメージがあるかと思いますが、それは本当です。その一方で、夜遅くまで残っていてもその実仕事らしい仕事はしていないというあまり知られていない事実もあります。日本では、会社の内部・外部に関わらずグループの結集が最重要視されます。部内や課内に一人でも残業をしている人がいれば、他のものはたとえその仕事の手伝いができなくても先に帰ることは許されません。最低でも9時ごろまでは机に向かって実は半分居眠りしながら仕事をしているふりを続けます。サラリーマンは出世を目指し、そんな毎日を送ります。こんな慣習は会社にとっては無駄としか思えず、いったいいつまで続けられるのか疑問を覚えます。若い世代のサラリーマンには、この慣習について私にこっそり大事にしたい慣習でもないし、その一部に組み込まれるのは嫌だと話してくれた人がたくさんいました。サラリーマンに忙しいかどうか聞くと、たとえすることが何もない状況であっても必ず「忙しい」と答えるでしょう。彼の属する部署や課内が忙しいだけで彼自身には何もすることがなくても、そう認めるのは本意に反することだからです。

異動の季節には、社内のだれもが心の奥底で密かに思い悩んでいます。繰り返しになりますが、異動に際して社員の意向が配慮されることはなく、どんな遠くに飛ばされようと会社の命令に背くことなど前代未聞だからです。会社は、社員への懲罰の一環として異動を命じることもあります。上司の怒りをかってしまった者は、辺鄙な土地に飛ばされて何年も戻れないようなことにもなるでしょう。

特に子供の教育上不都合があるようなときは,家族を残して一人で新しい任地に赴くこともまれではありません。ということは残された家族は、事実上父親無しで何年間かを暮らすことになります。これは結果的にさまざまな問題が家族全員にもたらされることになるでしょう。

次の私が実際に聞いた大分県から東京に異動された人の話は、ここでの話題にも関係あると思われます。この話を聞いたとき、その人は東京に住んですでに一年ほどが経ち、実家に戻れるまでは後2年あるということでした。彼は独りでワンルームのアパートに住み、好きなときにパチンコをし、いつでも同僚たちと飲みに出かけられる「独身生活」のような暮らしを楽しんでいました。しかし彼の「毎週妻宛てに小包を送っている」という話にはびっくりして、私は何を送っているのかたずねました。すると彼は「洗濯物」だと答えました。自分の洗濯物を自分で洗濯したことがないのです。これが欧米人の妻だったら、毎週汚れた洋服が送り付けられてくることにあまり喜びはしないでしょう。でもこれは日本の伝統的な働く夫の姿なのです。

ビジネスマンは社交的であることも求められます。たいてい一生同じ会社で勤め上げるので(運が良ければ)、上司や部下と良い関係を築くことがとても大事なのです。

日本の会社は、社員同士を仲良くさせることに熱心で、そのために正式・略式に関わらず色々な行事、たとえば運動会、パーティ、社員旅行などを主催します。飲み会は歓送迎会、忘年会など一年を通じて行います。こういった行事を通して、社員同士の結合、会社の一員である意識を強めさせようというわけです。こういった意識が日本では本当に要視されているためです。「属さねば追放」という少し乱暴な表現がありますが、これは日本社会の実態を見事に言い当てていると言えるでしょう。

他のページでも取り上げたことですが、日本のサラリーマンは仕事帰りによく飲みに行ったり麻雀やパチンコに出かけたりしてストレスを発散させようとします。そしてゴルフは、楽しみにでなく出世のために嗜まねばなりません。駅のプラットフォームで、老若とわずサラリーマンがゴルフのスイングの練習をしている姿はよく見かけられます。これを見てくだらないと思うガイジンは少なくないようですが、私もその一人であることを認めます。そう思うガイジンたちは、多分自分たちが10代のころギターを持たずにギターを弾くふりをしていたことを思い出し、少なくとも大人になった今はやらないぞ、と思うからではないでしょうか。(^^)

気がなかなか回復しない今、首になることもますます身近な心配事とされてきました。1998年は、戦後最悪の4.1%という失業率が記録されました。自殺者も増え続けています。東京近郊で通勤時間に電車に飛び込む人が増加していることに、JRも懸念を示しています。

中間職に就いているが転職が簡単なほどの技術も持たない人は、まるで「池の外のアヒル」で、人生において向かう先も分からずあっちこっち行ったり来たりしているだけのように見えます。そして「終身雇用」のはずだった会社から解雇の対象にされることが多いことになるのです。

派遣業界はこういった現状のおかげで羽振りが良いようです。派遣社員だけを雇うことでコストの削減を図ろうとする企業が多いからです。そこで知恵のあるサラリーマンは終身雇用制度に裏切られた後、新たな技術を身に付けようと奮闘します。そしてそういった人たちをサポートする技術者対象の派遣会社もあります。

 

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